食材(キュウリ)の切断面比較

−切れ味による違い−

最高に鋭利な包丁と,それなりによく切れる包丁で切ったキュウリの切片を顕微鏡観察してみました。研ぎの重要性を感じて頂ければ幸いです。



(研ぎ・撮影:ミクロワールドサービス)



  


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左はハガネをステンレスで挟んだ利器材の三徳包丁。右はステンレスの三徳包丁です。包丁は形も重要なので,似ているものを選んでいます。どちらの包丁も丸尾山砥石の『合さ』で最高の刃付けを行い,木綿の布10枚重ねをスパッと切れることを確認しています。そのあとに,右のステンレスの包丁は刃を垂直に立てて自重だけで砥石の上を1回だけ滑らせて切れ味をほんの少し落としています。このようにした状態で,ハガネの包丁が最高に切れることはもちろんですが,切れ味を落としたステンレスの包丁も家庭用として十分な切れ味を保っており,一般的な食材をカットしている限りではストレスなく使用できます。





  


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左がハガネを最高の刃付けにして切ったキュウリの切片,右が切れ味を落としたステンレスで切った切片です。どちらの包丁でも薄く切れていることがわかります。





  


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精製水で封じて一時的プレパラートにします。向こう側がハガネで切ったもの,手前が切れ味を落としたステンレスで切ったものです。いっけん手前の方が薄く切れているように見えます。





  


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顕微鏡にセットして観察します。





  


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左側が鋭利に仕上げたハガネで切ったもの,右側が切れ味を落としたステンレスで切ったものです(以下同じ)。左側は細胞がしっかり形を保っているのに対して,右側は細胞がつぶれてコントラストを失っています。端の方は,めくれてしまっています。





  


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倍率を上げてみると,細胞のつぶれ具合がさらにはっきりします。





  


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厚みのある部分を検鏡しても,同じことが起こっています。切れ味が落ちた包丁では,薄く切れてはいますが細胞をつぶしてしまっています。





  


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さらに倍率を上げて細胞の縁をみると,切れ味がよい包丁で切ったものは縁辺まで細胞が形を保っていて細胞質が漏れていない様子がうかがえます。対して切れ味が落ちた包丁では,細胞がつぶれて中身がでてしまい,細胞壁が折り重なっているのがわかります。



以上の観察から言えること,想像できることを記してみましょう。まず最初に指摘できることは,丸尾山砥石で最高に刃付けをした包丁は,家庭用の三徳のレベルであっても,キュウリの細胞を潰すことなく非常に薄く切れるということです。砥石と刃物の相性の良さを示しています。そして,合砥石で1回滑らせた程度の刃先の摩耗で,その切れ味は失われてしまうであろうということ。これは包丁を食器カゴなどに入れて,陶器などに刃先が触れれば切れ味がすぐに失われるであろうことを意味しています。

次に指摘できることは,細胞のつぶれ具合が異なるので,食味に影響するであろうこと。非常に薄く切れているのに,ぱりっとしてシャキシャキとした感触のキュウリを用意したいのであれば,切れ味がよい包丁が必要となるでしょう。細胞がつぶれていないキュウリは,非常に薄くても,水にさらすとぱりっとします。一度細胞がつぶれてしまったキュウリは,水にさらしてもぱりっとしません。逆にしんなりした食感を求めるのであれば,切れ味を追求しなくても良いかもしれません。和食の料理人はむかしから,包丁には最高の切れ味を求めてきましたが,その理由は単に切れるというだけでなく,微妙な食味のコントロールを手にしたいということなのかもしれません。





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